自作ファイヤーバード(11)フレット溝その2

五月だというのに夏の暑さ。この投稿の工作をしていたころは、まだ寒かったはずですが、紛らわしいのでその辺は触れずにいきますか。

さて、自作ファイヤーバードの工作。今回はフレット溝を掘ってゆきます。

使用するのはHOSCO社から販売されているフレット溝専用のノコギリです。名前もずばりフレットソー。フレットには様々なサイズがあり、フレットソーの幅にもいくつか種類があります。ところがです。いろいろ調べてみても、自分で使おうとしているフレットにはどのサイズが適しているのかわかりません。仕方ないのでテキトーに0.53ミリという奴を買ってみました。

フレット溝を掘るにはもう一つ、フレットソーガイドというものが必要です。文字通りノコギリがずれないようにするためのガイドです。なくても出来なくはないのですが、ここは大事な工程ですからフリーハンドはちょっと怖いです。

ところがところが。いざ探してみるとこれがベラボーに高い。海外発送なので送料も高い。筆者が見つけたのはスチューマックというアメリカのショップのもので、精度はいいのかもしれませんが、仕組みとしては単純そうです。なので、もう少しお手頃なものが見つかるまでは我慢しましょう。

というわけで今回はフレットソーガイドを急遽手作りする事に。ホームセンターで買ってきたアングル材と、家にあったあり合わせの木材でちゃちゃっと作ります。で、出来上がったのがこちら。

アングルはビス留めしてますが、木材は全部両面テープでの固定! ずいぶんとインスタントな工作ですね。(実はこの時は深夜だったので、あまりうるさい音が出せなかったのです)

木材をクランプで固定したら早速、掘ってゆきます。ギコギコ……。指板に使う木材というのは比較的硬いとされているのですが、やってみるとそんなに硬さは感じません。しかし途中で急にノコギリが動かし辛くなるポイントがあります。おそらく木材に溝が形成された事で僅かに湾曲しようという力が加わるのが原因ではないでしょうか。と言っても、さほどのものでもありません。音楽やラジオを聴きながら、チンタラやっていても、どんどん進んでゆきます。

この時は、まとまった時間がなかったため、数十分の作業×2日ほどで完了しました。感想としましては、フレット溝加工は苦行でも何でもなく、準備を整えて挑めばとても楽しい工作です。むしろ、いくらでもやりたいです。うん、またやろう。

ネットなどで調べるといろいろ情報が出てきて「これはちょっと難しそうだな……」と身構えてしまう事もありますが、実際にやってみると意外に簡単だったりする事もあるのですね。勉強になりました。これからもどんどんいろいろ挑戦してゆきたいものです。

自作ファイヤーバード(10)フレット溝その1

すごい。怒涛の連続投稿です。といっても、溜まっていたネタを書き出しているだけですが。

前回指板の木材に貼り付けた紙をガイドにしてフレット溝を掘ってゆきまきょう。

フレット溝加工。本で読んだり、ネットで調べてみると、そこそこ苦行であるらしいです。そのせいかギターワークスなどのショップでは、既に溝加工が施された指板用木材が販売されています。とても便利そう。しかしその分、お値段もそれなりに割高。高いんだったら自分でやりゃいいじゃん、となる訳ですが、それだけフレット溝加工が面倒くさい大変な工作であるとも言えるわけです。

そんなに大変なの……? 若干の迷いがありましたが、筆者としては「面倒くさい方が楽しい!」というモットーのもと、プレーンな木材を選んだ次第です。プレーンといっても、アイモクさんで買ったそれは、指板に適しただいたいのサイズにカットしてあるので、十分便利な代物です。

さて、まずは紙に書き出したガイドを元にカッター&差金で切り込みを入れてゆきます。印刷でもそうですが、紙に書かれた線には幅があります。自分的にはこの線の幅の中心がジャストになるようにと心がけていますが、なかなか高精度にはゆきません。この辺の正確さがギターの品質を左右するのでしょうね。今回の様に、手作業中心の工作では、どうしたって工程ごとに誤差というものが発生してしまうわけです。こういう遊びをしていると、どんなにお手頃価格の製品であっても、そんな誤差を最小限にして一定の品質を保ち続ける様々な分野の職人さん達を心から尊敬し、憧れてしまうわけです。

22フレットのギターなので、全部で22本の筋を入れ終えました。この作業によって、指板にスプレー糊で貼り付けた紙は役目を終え、各フレットサイズに分断されてパラパラと剥がれてゆきます。お疲れ様でした。

指板にカッターの筋が入ったら、次はいよいよこの線をガイドにしてノコギリで本格的にフレット溝を掘ってゆきます。

自作ファイヤーバード(9)指板その2

前回フレット位置を紙に書き出しました。次はこの紙を指板となる木材に貼り付けて、フレット用の溝を掘ってゆきます。

ここで賢い筆者は思いついたわけです。「せっかく頑張って書き出したんだし、コピーして使えば次も使えて省エネじゃん?」

ミディアムスケール用の指板はギリギリA3サイズでコピーを取る事ができました。コピーって便利。などと思ったその時、ある考えがふと頭をよぎります。「コピーって正確なの?」今まであまり疑問に思った事はなかったのですが、先の方眼紙の件もあり世の中が信じられなくなっていたせいもあり、チェックしてみたところ……ぜ、全然違う! 原本に比べコピーの方が僅かに(全長の1ミリくらい)サイズダウンしているのです。コピー機の個体差とかもあるかもしれませんので一概には言えませんが、やはりコピーも信用してはならないと知りました。勉強になります。

小さくなっていても全体のバランスが合っていればギターとしては問題ないのですが、そんな確証もありません。歪んでいる可能性もあるのです。

結果。頑張って書いた原本を貼り付けるしかないという事に。次はイラストレーターを使おうと思います。

というわけで方眼紙に書いた原本を指板の木材にスプレー糊で貼り付けました。木材はアイモクから購入した指板用のローズウッドです。次はいよいよフレットの溝を掘ってゆきますよ!

自作ファイヤーバード(8)指板その1

更新が滞っておりました。何も工作をしていなかったというわけではなく、ちゃんと色々やっておりました。ブログの更新って大変な根気がいるものなのですね。改めてため息。でも始めたからには、もっともっと頑張りますよ。

さて今回はファイヤーバードの進捗をひとつ。指板の工作です。

あれこれ勉強したフレット位置をリラルサイズで紙に書き出してゆきます。近くのホームセンターで買って来た方眼紙に、例の方法で記してゆきます。(詳しくは過去の投稿をご参照ください)

さてさて、ここでいつものようにトラブル発生です。買って来た方眼紙ですが……何か寸法がオカシイゾ……? さらに垂直であるはずの線も……何かオカシイゾ……? 色々便利かなと思って方眼紙を使ってみたのですが、あまり正確ではないのですね。製品にもよるのかもしれませんが。勉強になりました。

直角三角形を描いてフレット位置を割り出してゆくという例の方法ですが、実際にやってみると、これもなかなか簡単ではない事がわかりました。定規で三角形を描く際に、頂点がほんのわずかズレただけで、結構な感じで値が変わってしまうのです。まあ、当たり前といえば当たり前ですよね。

結局、計算機を使って答え合わせをしながら完成。さて、この段階で間違っているとギターとして成立しなくなってしまうわけですが、自分で使うものですから、あまり神経質にならずに行きましょう。ギターが完成してもし音がアレだった時は指板を剥がして作り直せばいいだけの話ですから。

というわけで次に進みましょう。

自作ファイヤーバード(7)フレット計算その3

遅々として進まない自作ファイヤーバードですが、頭の中ではずっと進行中です。というのも以前に投稿した図形を使ったフレット計算方法の事をずっと考えていたわけです。そしてようやく、ふとした事からなんとなく理解できた気がしたのでここにメモしておくことにします。

おさらいします。弦の長さf1を底辺にして、1フレット目の長さを垂直線R1とした直角三角形を作った時、Rの頂点からコンパスで弧を描き底辺と交わった点からさらに垂直線R2を立てる……という作業を繰り返してゆくと、2フレット目以降のフレットの幅が求められるという不思議な方法です。

実際にやってみると、どうやらその通りになるらしい事は判ったものの「一体なぜ?」という疑問だけが頭の隅に残りずっとモヤモヤしておりました。もしかしたら筆者の頭脳では理解できない複雑な理由なのか……? などとも考えました。

しかし、ある時(昨日の夕方)突然、以下の内容がひらめきました。

「この図は、いくつもの直角三角形が重なったものである」

「さらに、対となる垂直線Rと底辺Fの比は常に一定である」

フレットの幅を求める計算方法は前の投稿を参照していただくとしまして……1フレット目の幅は解放弦の長さに(1−0.94388=0.05612)をかけた長さ。さらに、2フレット目の幅は1フレットを押さえた時の弦の長さに同じく0.05612をかけた長さ。3フレット目の幅は2フレットを押さえた時の長さ×0.05612となります。

つまり、この直角三角形の垂直線Rと底辺Fの比は常に「0.05612」なのです。垂直線と底辺の比が同じ直角三角形の場合、底辺の直角ではない方の角の角度は常に一定ですから、全ての三角形を重ねると上記の図になるというわけです。

解ってしまえばとてもシンプルです。しかしとはいえ何もない所から思いつくものではありません。『それぞれのフレットの幅と、弦の長さの関係』に目をつけ、それを直角三角形にしてみる……といった感じで考えたのでしょうか。この方法を見つけた人はすごいです。とにもかくにも、これでようやくスッキリした気持ちで先へ進めそうです! やるぞ!

ちなみに、今回これを思いついた時に読んでいたのがグレッグ・イーガンの『シルトの梯子』でした。昨年暮れから読み始めたものの中々進まずまだ序盤で、さらに他のイーガン作品同様何が書いてあるか判らないことだらけであるにも関わらずとても引き込まれます。内容は別にギターのフレットの話でもなければ、三角関数の話でもないのですが、読んでいる途中になぜかふと思いついたのですから思考とは不思議なものですね。

自作ファイヤーバード(6)フレット計算その2

前回導き出したフレット間隔の謎の法則:iPhoneの計算機で出てきた数値は『1.059463094359295』でした。このブログでの表記は『1.0594』と省略して書くことにしましょう。

さてこのフレット間隔の謎の法則により、ギターの音が1フレットあがると、弦の振動数が1.0594大きくなることがわかりました。というわけで今回は、この1.0594という数字を使って、実際にギターのフレット位置を計算してゆきます。

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自作ファイヤーバード(5)フレット計算

ファイヤーバードの続きです。前回はネック材を切り出しました。そのままどんどん成形を進めたいところですが、平行して指板を作り始めることにします。

指板材にフレットの位置を決めて溝を彫るというこの工程。ギター工作ではなかなかの苦行とされてるようですね。しかし何事もやってみなければわかりません。恐れず進みましょう。(ギターワークスさんなど自作ギター専門店では、すでにフレット用の溝が彫られた指板が売っているのでてっとり早くいきたい場合は買っちゃうのもアリかもしれませんね)

さて今回は少し長くなりそうです。続きは以下で。

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自作ファイヤーバード(4)ネック材接着

さて、前回切り出した3枚のネック材を接着してゆきましょう。使うのはもちろん、レスポールキットでもお世話になったこれ、タイトボンドです。

木材をガッチリ接着してくれる頼もしいヤツ。普通の木工用ボンドに見えますが、硬化後の硬さは桁違い。これを知ってから世界が広がった気がします。

たった3枚をくっつけるだけなので、同時にやってしまいたいところですが、この手のボンドは作業中にニュルっとズレてしまいがち。大きさ的にも微調整が大変なので、焦らずに1枚ずつ接着してゆきましょう。

我が家のクランプ総動員でがっちり固定。今回使ったクランプは6本でした。これだけ大きいものを挟むとなると本当はもう少し本数が欲しいところですが、早くやってみたいウズウズを抑えきれず強行。作業が進めば、もっと長尺のものも必要になりそうなので、そのうち買い足そうと思います。

まずは最初の2枚。中心のウォルナットと隣のマホガニーを接着しているの図。

このまままるまる一日ほど圧着します。固まったらさらにもう一枚を重ねて接着します。

続いてもう1枚、反対側のマホガニーを接着。合計3枚の材料が合わりネック材となります。

少しづつではありますが、ギターっぽくなってきた……かな……?

自作ファイヤーバード(3)ネック材切り出し

ファイヤーバードのネック材を切り出してゆきましょう。今回使うのは府中家具さんから購入したマホガニーとウォルナットです。この3枚の木材をくっつけてスルーネック材にするというわけです。

スルーネックとはなんぞや。一般的なギターは、バラバラに作られたボディ材とネック材がくっつけられて出来上がっています。ボルトで固定するのがボルトオン。接着剤で固定されているのがセットネック。ところが、スルーネックというのはこれらとは異なりネック材がズドンとボディの端まで貫かれ、両側にウィング材が貼り付けられてギターの形になっているというもの。今回製作しているファイヤーバードはこのスルーネック方式で作られてるんです。

本家ギブソンのファイヤーバードはマホガニーとウォルナットが何と9枚も重ねられてネック材となっているそうです。そのうち両端の2枚はネックというよりボディの一部なので、それでも7枚の材料が貼り合わせてあるということになります。すごいですね。

しかし我家で自作する場合、木材を薄く引き割りする手段もなく、何より7枚も使うのは面倒くさいので、ぐっと省略して3枚でいくことにしました。

マホガニー+ウォルナット+マホガニーの3枚構成です。

早速、前回製作したテンプレートからシルエットをトレースして、木材を切り出してゆきましょう。張り切って始めたものの……このマホガニーとウォルナットの硬さに辟易。ギターの材料としては決して硬い方ではないはずなのですが、ホームセンターで手に入る杉や松などとは雲泥の差。ノコギリの刃がなかなか進んでゆきません。ノコ刃の入らない曲線部などはとくにハードです。これを3枚も切り出すとなると、一体いつまでかかることやら……。

こんな時のために世の中にはバンドソーというものがあるらしいですね。それがあればどんな木材も楽に切れるというよ……誰も皆欲しがるがはるかな世界……。

すっかりガンダーラ状態になっていると、見かねた家人がジグソーを貸してくれました。ジグソー自体は持ってはいたのですが、ドリルドライバーや電動ヤスリにチェンジできるバッテリー駆動のやつで、これが見かけのわりに全然使い物になりませんでした。なのであまりジグソーというものを信用していなかったのですが、いざ使ってみると「ヤダ何これ……?」今までの苦労は何だったのかと思えるほどの使い易さ!

今回登場したBOSCHのジグソー!古いものですがまったく問題なし!これから我家では大活躍しそうです。

というわけであっという間に3枚の木材の切り出しが完了です! お前すごいよジグソー!

20年以上前から使っているBLACK&DECKERのマルチツール。バッテリーがニッカドですぐにパワーダウンしてしまうのが弱点ですかね。でもドリルドライバーとしては我家ではまだまだ現役なのです。

自作ファイヤーバード(2)テンプレート

設計がだいたいできたらテンプレートを作りましょう。木材を切り出す時のガイドにするためです。まずはポリプレピレンの板を使うことにしまた。トリマーなど電動工具を使用する際のテンプレートであればMDF板など厚手の板で作ったほうがいいのですが、今回はネック部の横から見た図を材料に書き写すためのものなので薄くて透明なポリプレピレン板を選んだというわけです。

ホームセンターで一枚ベロンと買って来たポリプレピレン板はそれなりに結構デカイのですが、それでも横から見た図(断面図?)を斜めに配置してギリギリ治るという具合。ギターって結構大きいんだなぁと時々あらためて思います。中でもファイヤーバードって異様にデカイというか長いというか。まあそこが面白いわけですが。

短いですが本日はここまで。次はネック材の切り出しですが、はたしていつ時間が作れることやら……。