自作ファイヤーバード(7)フレット計算その3

遅々として進まない自作ファイヤーバードですが、頭の中ではずっと進行中です。というのも以前に投稿した図形を使ったフレット計算方法の事をずっと考えていたわけです。そしてようやく、ふとした事からなんとなく理解できた気がしたのでここにメモしておくことにします。

おさらいします。弦の長さf1を底辺にして、1フレット目の長さを垂直線R1とした直角三角形を作った時、Rの頂点からコンパスで弧を描き底辺と交わった点からさらに垂直線R2を立てる……という作業を繰り返してゆくと、2フレット目以降のフレットの幅が求められるという不思議な方法です。

実際にやってみると、どうやらその通りになるらしい事は判ったものの「一体なぜ?」という疑問だけが頭の隅に残りずっとモヤモヤしておりました。もしかしたら筆者の頭脳では理解できない複雑な理由なのか……? などとも考えました。

しかし、ある時(昨日の夕方)突然、以下の内容がひらめきました。

「この図は、いくつもの直角三角形が重なったものである」

「さらに、対となる垂直線Rと底辺Fの比は常に一定である」

フレットの幅を求める計算方法は前の投稿を参照していただくとしまして……1フレット目の幅は解放弦の長さに(1−0.94388=0.05612)をかけた長さ。さらに、2フレット目の幅は1フレットを押さえた時の弦の長さに同じく0.05612をかけた長さ。3フレット目の幅は2フレットを押さえた時の長さ×0.05612となります。

つまり、この直角三角形の垂直線Rと底辺Fの比は常に「0.05612」なのです。垂直線と底辺の比が同じ直角三角形の場合、底辺の直角ではない方の角の角度は常に一定ですから、全ての三角形を重ねると上記の図になるというわけです。

解ってしまえばとてもシンプルです。しかしとはいえ何もない所から思いつくものではありません。『それぞれのフレットの幅と、弦の長さの関係』に目をつけ、それを直角三角形にしてみる……といった感じで考えたのでしょうか。この方法を見つけた人はすごいです。とにもかくにも、これでようやくスッキリした気持ちで先へ進めそうです! やるぞ!

ちなみに、今回これを思いついた時に読んでいたのがグレッグ・イーガンの『シルトの梯子』でした。昨年暮れから読み始めたものの中々進まずまだ序盤で、さらに他のイーガン作品同様何が書いてあるか判らないことだらけであるにも関わらずとても引き込まれます。内容は別にギターのフレットの話でもなければ、三角関数の話でもないのですが、読んでいる途中になぜかふと思いついたのですから思考とは不思議なものですね。

自作ファイヤーバード(6)フレット計算その2

前回導き出したフレット間隔の謎の法則:iPhoneの計算機で出てきた数値は『1.059463094359295』でした。このブログでの表記は『1.0594』と省略して書くことにしましょう。

さてこのフレット間隔の謎の法則により、ギターの音が1フレットあがると、弦の振動数が1.0594大きくなることがわかりました。というわけで今回は、この1.0594という数字を使って、実際にギターのフレット位置を計算してゆきます。

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自作ファイヤーバード(5)フレット計算

ファイヤーバードの続きです。前回はネック材を切り出しました。そのままどんどん成形を進めたいところですが、平行して指板を作り始めることにします。

指板材にフレットの位置を決めて溝を彫るというこの工程。ギター工作ではなかなかの苦行とされてるようですね。しかし何事もやってみなければわかりません。恐れず進みましょう。(ギターワークスさんなど自作ギター専門店では、すでにフレット用の溝が彫られた指板が売っているのでてっとり早くいきたい場合は買っちゃうのもアリかもしれませんね)

さて今回は少し長くなりそうです。続きは以下で。

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自作ファイヤーバード(4)ネック材接着

さて、前回切り出した3枚のネック材を接着してゆきましょう。使うのはもちろん、レスポールキットでもお世話になったこれ、タイトボンドです。

木材をガッチリ接着してくれる頼もしいヤツ。普通の木工用ボンドに見えますが、硬化後の硬さは桁違い。これを知ってから世界が広がった気がします。

たった3枚をくっつけるだけなので、同時にやってしまいたいところですが、この手のボンドは作業中にニュルっとズレてしまいがち。大きさ的にも微調整が大変なので、焦らずに1枚ずつ接着してゆきましょう。

我が家のクランプ総動員でがっちり固定。今回使ったクランプは6本でした。これだけ大きいものを挟むとなると本当はもう少し本数が欲しいところですが、早くやってみたいウズウズを抑えきれず強行。作業が進めば、もっと長尺のものも必要になりそうなので、そのうち買い足そうと思います。

まずは最初の2枚。中心のウォルナットと隣のマホガニーを接着しているの図。

このまままるまる一日ほど圧着します。固まったらさらにもう一枚を重ねて接着します。

続いてもう1枚、反対側のマホガニーを接着。合計3枚の材料が合わりネック材となります。

少しづつではありますが、ギターっぽくなってきた……かな……?

自作ファイヤーバード(3)ネック材切り出し

ファイヤーバードのネック材を切り出してゆきましょう。今回使うのは府中家具さんから購入したマホガニーとウォルナットです。この3枚の木材をくっつけてスルーネック材にするというわけです。

スルーネックとはなんぞや。一般的なギターは、バラバラに作られたボディ材とネック材がくっつけられて出来上がっています。ボルトで固定するのがボルトオン。接着剤で固定されているのがセットネック。ところが、スルーネックというのはこれらとは異なりネック材がズドンとボディの端まで貫かれ、両側にウィング材が貼り付けられてギターの形になっているというもの。今回製作しているファイヤーバードはこのスルーネック方式で作られてるんです。

本家ギブソンのファイヤーバードはマホガニーとウォルナットが何と9枚も重ねられてネック材となっているそうです。そのうち両端の2枚はネックというよりボディの一部なので、それでも7枚の材料が貼り合わせてあるということになります。すごいですね。

しかし我家で自作する場合、木材を薄く引き割りする手段もなく、何より7枚も使うのは面倒くさいので、ぐっと省略して3枚でいくことにしました。

マホガニー+ウォルナット+マホガニーの3枚構成です。

早速、前回製作したテンプレートからシルエットをトレースして、木材を切り出してゆきましょう。張り切って始めたものの……このマホガニーとウォルナットの硬さに辟易。ギターの材料としては決して硬い方ではないはずなのですが、ホームセンターで手に入る杉や松などとは雲泥の差。ノコギリの刃がなかなか進んでゆきません。ノコ刃の入らない曲線部などはとくにハードです。これを3枚も切り出すとなると、一体いつまでかかることやら……。

こんな時のために世の中にはバンドソーというものがあるらしいですね。それがあればどんな木材も楽に切れるというよ……誰も皆欲しがるがはるかな世界……。

すっかりガンダーラ状態になっていると、見かねた家人がジグソーを貸してくれました。ジグソー自体は持ってはいたのですが、ドリルドライバーや電動ヤスリにチェンジできるバッテリー駆動のやつで、これが見かけのわりに全然使い物になりませんでした。なのであまりジグソーというものを信用していなかったのですが、いざ使ってみると「ヤダ何これ……?」今までの苦労は何だったのかと思えるほどの使い易さ!

今回登場したBOSCHのジグソー!古いものですがまったく問題なし!これから我家では大活躍しそうです。

というわけであっという間に3枚の木材の切り出しが完了です! お前すごいよジグソー!

20年以上前から使っているBLACK&DECKERのマルチツール。バッテリーがニッカドですぐにパワーダウンしてしまうのが弱点ですかね。でもドリルドライバーとしては我家ではまだまだ現役なのです。

自作ファイヤーバード(2)テンプレート

設計がだいたいできたらテンプレートを作りましょう。木材を切り出す時のガイドにするためです。まずはポリプレピレンの板を使うことにしまた。トリマーなど電動工具を使用する際のテンプレートであればMDF板など厚手の板で作ったほうがいいのですが、今回はネック部の横から見た図を材料に書き写すためのものなので薄くて透明なポリプレピレン板を選んだというわけです。

ホームセンターで一枚ベロンと買って来たポリプレピレン板はそれなりに結構デカイのですが、それでも横から見た図(断面図?)を斜めに配置してギリギリ治るという具合。ギターって結構大きいんだなぁと時々あらためて思います。中でもファイヤーバードって異様にデカイというか長いというか。まあそこが面白いわけですが。

短いですが本日はここまで。次はネック材の切り出しですが、はたしていつ時間が作れることやら……。

自作ファイヤーバード(1)設計

自作ギターに挑戦するというのがこのブログの目標でした。ようやく材料の準備と心の準備が整ったようなので、始めてみようと思います。

作るのはギブソンのファイヤーバードタイプです。スルーネック&リバースシルエットがカッチョイイ個性的なギターです。前から一度手にしてみたいと思っておりました。「買う」という選択肢もあったのですが、ギター工作の楽しみを知ってしまった今、特にこのモデルに関しては「作る」と決めておりました。

まずは設計です。ネットでは熱心なマニアの方々が独自に起こした設計図などもアップされてるのですが、残念ながら作ろうとしているモデルは見つけられませんでした。なので近いモデルの設計図や写真、データ、お店で実物を観察した時の記憶などを参考に独自に起こしてゆきます。

今時この手の作業はイラストレーターなどパソコンでやるものですが、今回は手でいきます。使うの方眼紙にシャーペン、消しゴム、定規、セロテープです。この方が大きさの感覚が掴みやすいのと、何より楽しいですからね。設計図といっても、どうせ作ってゆくうちにあちこちズレてくるはずなのでザックリでOKとしました。書いたり消したりを繰り返して何となく「こんな感じかな」に近づけてゆきます。

さて、いよいよ開始した自作ファイヤーバード。楽しみながらゆるゆると進めてゆきましょう。