フライングV調整その3

さて、フライングVの調整を続けてゆきましょう。機能的な問題はほぼ解決できたので、次は外見ですね。

外見的に気になったのが、フロントピックアップのエスカッションです。まるで狭いスペースに無理に嵌め込んだかのようにグニャリと潰れているのです。しかしビスを外して見ると改造などの痕跡は見られません。はたして出荷状態からこうだったのでしょうか?

というわけで考えた結果、ちょうど試してみたいピックアップがあった事もあり、今回はピックアップをエスカッションごと交換する事にしました。

今回新たにつけるのはケンアームストロングというメーカーのハムバッカーサイズのP90です。P90というとソープバータイプが一般的ですが、ハムバッカー型をこれに付け替えるにはボディのザグリに加工が必要となります。ところがコイツはハムバッカーサイズなので加工なしで、チョイチョイと載せる事ができるというわけです。

ところが……、

思わぬトラブルがここで発生! 何とリアピックアップのエスカッションを固定していたビスの一つが錆びのためネジ山が潰れていたのです! ぎゃああ……。世の中で舐めてしまったビスほど嫌いなものはありません。瞬間接着剤などを使う方法も試しましたがうまくゆきません。はあああ、どうしよう……。

今回はピックアップ交換は諦めようか……という考えも頭をよぎりました。しかし、やりかけの工作を途中で引き返すのも気持ち悪いものです。悩んだ末に強行手段にうって出ます。エスカッションを犠牲にするという方法です。

エスカッションをニッパで分解し、舐めてしまったビスの部分だけ残してグルグル回転させます。結果、無事にビスを外す事ができました!

こうしてピックアップ交換は無事完了! エスカッションのサイズもピッタリと治りました。

当初、錆びたビスもなかなかカッコいいなどと思っていたのですが、このけんこの後、ピックガードなどのビスを一通り交換しました。

今回はその他に、ペグをロック式のものに交換しました。使ったのは以前レスポールキットで使っていたものです。(実はあのレスポールは今、大手術中なのです……まあ、そのお話はまたの機会に)

というわけでライブには無事に間に合いました。しかし本番当日はペダルチューナーの電池が切れるなどのハプニングもあったせいか、チューニングが安定せず、いささかトホホな結果に。何が原因かは現在検証中であります。

しかしやっぱりVはかっこいいです。時間を見てもう少し調整を続けてみようと思います。

フライングV調整その2

さて、引き続きライブに向けてのフライングVの調整です。前回はネックに仕込み角を設けて弦高を直しました。これでとりあえず大きな問題は解決できました。後は時間の許す限り気になるポイントを直してゆきましょう。

次に気になったのがブリッジのアンカーです。本来ブリッジのアンカーとはボディに直接打ち込まれているもの。しかしこのフォトジェニック・フライングVはどうしたことか、片方だけピックガードの上から打ち込まれているのです。

一体なぜ……!?

この方が生産コストが抑えられるのでしょうか? 理由はわかりませんが、このままではボリュームなど電気系をいじるために毎回アンカーを引っこ抜かなくてはなりません。さすがに毎回そんな面倒くさい事はやってられません。それにアンカーがピックガードの上にあるので、その分ブリッジ(の片側)が若干高くなり、弦高を目一杯下げる事ができないのです。

作業としては簡単です。一度ピックガードとアンカーを外して、ピックガードに空いているアンカーの穴の直径を広げてやればいいのです。そうする事でアンカーがボディに刺さったまま、ピックガードを外せるようになるという寸法です。

リーマーを使ってコジコジと穴の径を広げてゆきます。キレイに仕上げたいところですが、今回はスタジオ練習やライブも迫っているので、本当の仕上げはまた今度ということで。

ピンがきてなくてすみません。リーマーを写したつもりでした。リーマーは経の小さい穴を同心円状に拡大できる、とても便利なツールです。

というわけで無事にアンカーがボディぴったりに打ち込むことができました。これで弦高調整の幅も広がり、電気系の改造も格段に楽なりました。

さて次は外見の気になる所に手を加えてゆきましょう。

フライングV調整その1

春は何かと忙しいものですが、今年は新年度の行事にバンドのライブが重なり、ついでに風邪を拗らせてしまうという有様。それでも家人に支えられ、仲間や友人に助けられ、仕事先に迷惑をかけながら、どうにか乗り切ることができました。こんな場所ではありますが、皆様ありがとうございました&ごめんなさい。ぺこり。

そんなこんなですっかり更新が滞っておりましたこのブログですが、ネタは色々溜まっております。どこからまとめたらいいものやら考えましたが、とりあえず一番記憶に新しいネタからいきましょう。

というわけで今回はフライングVの「調整」です。修理ではなく、再生でもなく「調整」です。

と申しますのも、先頃に某フリマでフライングVタイプのジャンクを衝動的に購入して、届いた物を組み立てて弦を張ってアンプに繋いでみたところ割と普通にキレイな音が出たのです。要するに厳密にはジャンクではなかったというわけです。(ちなみにメーカーはお馴染み(?)フォトジェニックです)

フライングVにもいろいろあるのですが、この初期タイプの黄色が一番好きなもので、衝動買いしてしまいました。

そこで今回のライブはこのVを使おうという事になりました。やっぱりこのタイプはライブ栄えしますから。

前のオーナー様によるものでしょうか。かっちょいいステッカーチューンが施されています。よく見るとこれはイエモンのバックステージパスではありませんか!

といっても、現状のままというわけにもゆかず、ちょこちょこ手直しが必要です。

まず一番の問題は弦高が高すぎた事です。弾けない事もないのですが、もう少し低くできると有難いといった具合でした。

しかし既にブリッジサドルは一杯まで低くなっていて、これ以上低くできません。確認したところネックが若干ですが順反りしていました。はたしてこれが原因なのでしょうか?

だとすれば対策はひとつ。トラスロッドカバーを外してトラスロッドを調整してみましょう。早速レンチを差し込んでみたところ……「ん?」何か違和感が……。レンチの先のカチャカチャという感触は一体……? ロッドの調整口をよく見てみると、そこには衝撃の事実が……。何とロッドを締めるナットがユルユル状態なのでした。

まあ……この状態でネックの反りがこの程度というのは、それはそれで有難いのかもしれません。ナットを軽く締めたところ、ちゃんと効いていたので一安心。ここはこのままにしておきましょう。弦高が十分下がるまで締めてしまうと、逆反り状態になってしまいそうだったので。

さて、そうなると次なる対策は「ネックの仕込み角を変える」です。「仕込み角」とは何ぞや?

ギブソン系のギターは、ボディとネックが一直線ではなく、ほんの僅かな山形となるように角度がつけられており(およそ5度)、それによって弦高がちょうどよくなっているのです。

具体的にはどうやるかと申しますと、ネックとボディの接合部に「シム」という薄いパーツを挟んでやるだけです。このシムの厚さによって角度を調整できるというわけです。

これがシムです。ただの薄い紙みたいなものでした。こいつをボディ側の二本のボルトに挟んでやると、仕込み角が発生するというわけです。今回は0.5㎜と0.25㎜の二枚重ねでいきました。

で、実際にシムを仕込んでみたところ、これが大成功。弦高を調整できる十分な余裕ができました。ブリッジを下げれはベタづけまでいけます。凄いです、仕込み角!

ちなみにこの方法、このギターがジョイントネックだったからこそできる技でもあります。本家ギブソンはセットネックですので、こんな事はできませんから。

さて。これで一番の問題がクリアできたわけです。後は、ライブに向けて他の箇所をカスタマイズして行きましょう。楽しい作業の始まり!

……の、はずだったのですが。

続きはまたこの後に。